世界で最も広く栽培され、消費されている香辛料、それが唐辛子です。育て方も難しくなく、古くは江戸時代から観賞用としても親しまれて来ました。辛み成分であるカプサイシンには様々な身体に良い効能があります。
今回はそんな唐辛子の育て方・栽培のコツをご紹介します。
唐辛子の育て方解説!ステップ・グッズ・栽培のコツとは
1)唐辛子の紹介
(1)唐辛子とは
どの家庭にも必ず常備してある香辛料のひとつで、ピリリとした辛さが人気です。冬には身体を温めるのに使え、夏には夏バテ時に辛い物を食べて元気を出す等、一年中使える便利さも魅力的です。
(2)科目・原産地
ナス科のトウガラシ属です。メキシコが原産です。
(3)草丈・開花期
草丈は40センチから60センチ程です。7月から9月頃に真っ白い花を付けます。
(4)名前の由来
唐辛子の名前の由来は、漢字の通り「唐」から伝わった「辛子」という意味です。ただし「唐」は中国の事ではなく、漠然と「外国」全般を差していると言われており、特に中国経由で伝わって来た訳ではありません。
(5)期待できる効果・効能
一般的に使われる、料理に辛みを付ける用途の他にも、様々な薬用にも用いられます。効能は多く、胃の調子を整えたり、湿布剤に配合して筋肉痛を和らげたり、凍傷の治療や育毛にまで効果があります。また防虫効果もあり、衣類や書物・人形などの物品保存や、米等の食品保存にも使用されて来ました。
(6)育てる難易度・耐寒性
唐辛子は、栽培の難易度自体は低く初心者向けですが、寒さに非常に弱く耐寒性が全くありません。その為地域によって種蒔きや植え付けの時期に大きく差が出るのが特徴です。
2)種類を理解しよう!唐辛子の4つの種類と特徴
唐辛子の種類はとても多く、世界中に数百を超える栽培品種が存在しています。ここでは馴染み深い代表的な4種類を紹介します。
(1)トウガラシ
いわゆる普通の唐辛子です。赤く細長い形をした身には辛味成分であるカプサイシンを多く含む他、カロテンやビタミンCも豊富です。血行を良くして発汗を促したり、食欲を増進させたり消化を助ける効果があります。
(2)タカノツメ
3センチ程の小さな実で、先が尖り全体が曲がった形状が鷹の鉤爪によく似ているため、こう呼ばれています。実を丸ごとの他、輪切りや粉末にして使用します。粉末にしたものを一味唐辛子と呼んでいます。
(3)ハバネロ
恐ろしく辛い品種で、1994年から2005年の間には世界一辛い唐辛子としてギネスブックに認定されていました。(その後の研究で更に辛い品種が見つかった為、現在は世界一の座を譲っています)単に辛いだけではなく、柑橘系のさわやかな香りを持っており、鳥肉や牛肉料理、カレー等に使用すると料理全体の食味を向上させることができます。
(4)シシトウ
辛くない唐辛子として有名です。緑色をしているのは熟する前に収穫しているからで、成熟すれば赤くなります。栄養価が高く、特にビタミンC等を多く含んでいるため夏バテに効果があります。他にはピーマンやパプリカもこの種に分類され、全体を「甘唐辛子」と呼んでいます。
3)唐辛子を栽培するのに用意する3つのグッズ
(1)プランター
種蒔きから栽培する時に使います。(初心者は苗から育てるのが簡単ですが、種蒔きから挑戦したい時には使用しましょう)標準よりも深めの、底まで60センチ以上あるものを使いましょう。底がメッシュタイプになっている物が、水はけも良くベストです。
(2)ポリ袋
種蒔きをした後の保温・保湿の為に使います。唐辛子は低温・乾燥に非常に弱いです。
(3)土
市販の土を使うのが簡単ですが、自分でも作る事が出来ます。赤玉土6に対し腐葉土4の割合で混ぜ、仕上げに堆肥を混ぜ込みましょう。なお畑や庭に植え付ける場合は、その部分にあらかじめ石灰を混ぜ込んでおきましょう。土壌の酸性度を中和する為です。
4)唐辛子の7つの栽培ステップ
(1)ステップ1:種蒔き
2センチから3センチの間隔をあけて、種を押し込むように蒔いて行きます。唐辛子の発芽には28℃以上の地温が必要なので、種を蒔いたら室内に置いて管理すると良いでしょう。尚、蒔いた種が畑や庭に植え付けられる大きさに成長するまでには70日から80日かかります。その間適切な管理を怠らないようにしましょう。
(2)ステップ2:水やり
土が乾燥しないようたっぷりと水をやり、保湿と保温の為にポリ袋を被せてやると良いでしょう。
(3)ステップ3:植え付け
唐辛子は寒さに極端に弱いですので、気温が十分に上がってから植え付けをしましょう。(地域によって適した時期に差があります)40センチから50センチの間隔をあけて植え付けます。
(4)ステップ4:支柱立て
唐辛子は植え付け直後は茎が細く、風などで簡単に倒れてしまうため、早めに仮支柱を立てて支えてやる必要があります。1番花が咲いて側枝が成長を始めた辺りで本支柱に替えましょう。本支柱の高さは約1メートル必要です。その後も成長具合を見て適宜支柱を増やしてやると良いでしょう。
(5)ステップ5:肥料
ゆっくりと効く、緩効性の化成肥料が売られていますので、2か月に1回程のペースで与えるようにします。ただし窒素分の多い肥料は花が少なくなってしまう為、与えてはいけません。
(6)ステップ6:脇芽かき
最初の花の蕾がついた頃に、葉っぱの付け根から出てくる脇芽を摘み取る作業があります。これを脇芽かきと言います。1番上にある2つの脇芽だけを残して、他はすべて摘みとってしまってください。脇芽かきを行うことで花や実が多くつくようになるので、必須の作業です。
(7)ステップ7:収穫
唐辛子は植え付け後1か月半から2か月と、早いペースで収穫の時期を迎えます。赤く色が付いた物から順次収穫します。唐辛子の枝は折れやすいので、手で千切らずにハサミ等を使い、ヘタのすぐ上の部分を切り取りましょう。
5)唐辛子を効果的に栽培する7つのコツ
(1)土・鉢植えのコツ
水はけがよく、有機質に富んだ土が適しています。また畑・庭植えの場合は、以前その場所に唐辛子と同じナス科の植物を植えていなかったかどうかをよく確認してください。唐辛子は連作障害に非常に弱い為、それを防ぎましょう。最低でも3年間は連作を避けてください。これは鉢植えに使う土も同じです。
(2)日常の手入れのコツ
最初の花の蕾が付いた頃に、脇芽かきという作業が必ず必要です。また蒸れやすいので、葉が混み合ってしまっている場合は適宜摘み取ってください。この時は葉のみを切り取るだけでよく、枝は放置します。唐辛子の若葉は煮ると美味しく食べる事が出来ますので、活用しましょう。
(3)肥料・水やりのコツ
市販の緩効性の化成肥料を2か月に1回程度のペースで与えます。水は土の表面が乾いたらたっぷりと与えてください。唐辛子は根が浅くしか張らない為とても乾燥に弱いです。畑栽培は特に乾きやすいので、真夏には根本に敷きワラ等を施す必要もあります。
(4)日当たり・置き場所のコツ
唐辛子は日当たりが良い場所を好みます。十分日光が当たる場所で栽培しましょう。ただし乾燥にはくれぐれも注意してください。
(5)増やし方のコツ
唐辛子は実の中にある種から増やすことができます。実を収穫したら種を採り、よく水洗いして植え付けの適期まで保管しておきましょう。
(6)虫対策・健康的に育てるコツ
唐辛子に付きやすい害虫は、アブラムシやハダニ等です。見つけ次第薬剤で殺虫する事になりますが、この時は市販の野菜用の殺虫剤を使用してください。またハダニは水を苦手としている為、葉に定期的に霧吹きで水をかける事で予防が可能です。いずれも大量発生する前に対処しましょう。病気対策としては連作を避けることと葉を適宜摘み取って、蒸れた部分を作らない事がコツとなります。
(7)収穫のコツ
唐辛子の枝は折れやすいですから、手で千切らずにハサミ等を使って丁寧に収穫しましょう。また果実が青く小さい内に葉を収穫すると、葉トウガラシとしても利用出来ます。
6)唐辛子の収穫後の効果的な用途・活用方法とは
(1)食用として
普通に料理に辛みを付ける他にも、醤油や酢・泡盛などに漬け込むことで、一風変わった調味料が出来上がります。また漬け終わった唐辛子自体も、刻んでサラダ等に利用できる為無駄なく使えます。
(2)薬用として
エキスを抽出して温湿布剤に配合すると、良い筋肉痛の薬になります。他に健胃作用や凍傷の治療・育毛にも効果があります。
(3)その他の利用法
乾燥させた実を米びつの中に入れておくと良い虫除けになります。食品だけではなくタンスの中の衣類や書物・人形等の保存にも役立ちます。
7)保存方法は?唐辛子を保存する場合のポイント
(1)生の状態の保存
唐辛子は乾燥させた物よりも生の状態の方が栄養価が高いので、その状態をなるべく長く保ちたいものです。冷凍保存が出来ますので、使い切れない分はフリーザー袋に入れて冷凍しておきましょう。1年間程なら十分持ちます。
(2)乾燥させた状態の保存
よく乾燥させて、密封できる瓶に乾燥剤と共に入れておきましょう。乾燥させる際には直射日光を当てないようにしてください。日光に当てると茶色く色が抜け、辛みや風味も無くなってしまう為です。唐辛子の表面にシワが出来、振るとカラカラ種の音がするようになるまで乾燥させましょう。
8)唐辛子を栽培する魅力とは
(1)生の唐辛子をいつでも楽しめる
唐辛子は生の方が栄養価が高いです。一度に多く摂取し過ぎるのは胃腸に負担をかけてしまうのですが、育てていれば、栽培期間中はいつでも手軽に生の唐辛子が手に入る為、少しずつ摂取する事が出来ます。結果、その健康効果や栄養効果を最大限に利用する事が出来るようになります。
(2)綺麗なインテリアにも
唐辛子の実はとても鮮やかな赤い色に色づきます。室内植えにしていれば十分に目も楽しませてくれるでしょう。
(3)来年の為に
唐辛子は一つの実から沢山の種が採れますので、収穫した後には是非採っておきましょう。来年もまた新鮮な唐辛子のある生活を楽しめます。ただしくれぐれも連作障害には注意してください。
今回のまとめ
1)唐辛子の紹介
2)唐辛子の4つの種類と特徴
3)唐辛子を育てる難易度・耐寒性とは
4)唐辛子を栽培するのに用意する3つのグッズ
5)唐辛子の7つの栽培ステップ
6)唐辛子を効果的に栽培する7つのコツ
7)唐辛子の収穫後の効果的な3つの用途とは
8)唐辛子を保存する場合のポイント
9)唐辛子を栽培する魅力とは