ムシトリスミレの育て方とは?5つの栽培ステップを紹介

ムシトリスミレ

ムシトリスミレは花が綺麗な種類が多く、愛好家の多い食中植物です。日本産、ヨーロッパ産、南米産は栽培の難易度が高いので、北米産の暖地性のもの(アメリカンピンギキュラ)、熱帯高山性のもの(メキシカンピンギキュラ)の2つの育て方をご紹介します。






目次

1)ムシトリスミレの紹介

(1)ムシトリスミレとは

タヌキモ科の多年草で、食虫植物の1つです。北半球の寒帯に広く分布しています。高山の湿った岩壁や湿原に生えます。茎はなく、葉は長さ3~5センチの長楕円形ないし狭卵形で、短い柄があり、数枚が根生してロゼット状に広がっています。葉は黄緑色で、葉面には無数の小腺毛があります。これから消化酵素を含む粘液を出し、その粘着力で小昆虫を捕まえます。粘液がこぼれないように葉の縁がやや内側に曲がっているのが特徴的です。

(2)科目・原産

科目:タヌキモ科ムシトリスミレ属(ピンギキュラ属)

原産地:北米、日本、ユーラシア大陸など北半球の寒帯に広く分布。 日本では高山植物として有名です。

(3)草丈・開花期と花色

草丈:地上1~15センチ。開花期:2月~6月(種類によっては夏)。

(4)名前の由来

学名はPinguicula。和名をムシトリスミレといいます。学名の「ピンギキュラ」でも流通しています。花の形がスミレに似ているので、この名で呼ばれています。

(5)栽培の難易度・耐寒性・耐暑性

難易度:園芸初~中級者向け
耐寒性:普通~弱い耐暑性:普通~弱い

2)種類の違いはあるの?

ムシトリスミレは約80の種類があります。そして、このピンギキュラ属の1属を生育型で分類すると、冬芽をつくって越冬し日本にも自生地がある「寒地性」、北米原産で周年生育する「暖地性」、メキシコ原産の「熱帯高山性」の3つのグループに分けられます。冒頭でも述べましたが、ここでは「寒地性」のムシトリスミレは、冷却装置など特殊な機械などを設備する必要があるため育て方は割愛します「暖地性」「熱帯高山性」の2グループについての育て方を見ていきましょう。

微妙な育成法の違いから失敗させてしまうことがあるので、ムシトリスミレを育てようとするときには、以下の二つの区別を気に掛けましょう。暖地性で比較的暑さに強く、地生種(地に根を張って育つ種類)であって、湿った環境を好む北米産(以後、「アメリカンピンギ」と呼称していきます)。

山野草に近い着正種(岩や樹木に付着して育つ種類)であり、乾いた環境を好む、デリケートな扱いの必要となるメキシコ産(以後「メキシカンピンギ」と呼称します)かをチェックしておきましょう。アメリカンピンギで有名なのが「ピンギキュラ・プリムリフロラ」です。北米原産の丈夫な普及種で、名前の由来はプリムラ(サクラソウ)のような花を咲かせるためです。

暖地性ですが、寒さには比較的に強い性質を持ちます。メキシカンピンギでは、「ピンギキュラ・モラネンシス」が最も一般的なメキシカンピンギキュラとして知られます。日本にも愛好家が多い種類で、赤紫の濃い色をした花を咲かせます。

3)グッズを準備しよう! アメリカンピンギ&メキシカンピンギの違い

【1】アメリカンピンギ

(1)グッズの名称

ムシトリスミレ苗、園芸バサミ、水苔、生水苔、鹿沼土小粒+赤玉土小粒+酸度未調整のピートモスの等量配合土、素焼き鉢またはプラスチックの鉢

(2)選ぶ基準

鉢の種類は素焼き鉢またはプラスチック製を選びます。

(3)初期費用

2、000~3、000円ほど

(4)入手方法

ホームセンター、種苗を扱う園芸店、ネットショップなどで入手できます。

【2】メキシカンピンギ

(1)グッズの名称

ムシトリスミレ苗、園芸バサミ、水苔、生水苔、鹿沼土+軽石+富士砂+バーミキュライト+パーライト、水苔+砂利系、素焼き鉢またはプラスチックの鉢または駄温鉢

(2)選ぶ基準

鉢の種類には拘らなくても、元気に育ちます。

(3)初期費用

2、000円ほど

(4)入手方法

ホームセンター、種苗を扱う園芸店、ネットショップなどで入手できます。

4)正しい手順で栽培を!ムシトリスミレを育てる3つの栽培ステップ

(1)ステップ1: 植え付け

種を入手できた場合は暖かい時期に湿らせた水苔の上に蒔きます。しかし、ムシトリスミレは種子での販売ではなく、春から夏にかけて苗の状態で販売されているのが一般的です。価格は500円から1500円くらいです。

・アメリカンピンギ

料分の少ない用土で鉢植えにして栽培します。根の動き出さない真冬から春の間に行います。鉢植えにする際、購入した苗に水苔が使われていた場合は、新しく用意した水苔にすべて交換します。寒さにはそこそこ強く、冬場に用土が多少凍る程度であれば問題ありません。庭植えにする場合には、常に土が湿っていて日当たりのよい場所を選び、肥料分が少なくなるようピートモスや川砂などを混ぜ込みます。

・メキシカンピンギ

鉢植えにする際、購入した苗に水苔が使われていた場合は、新しく用意した水苔にすべて交換します。日本の冬期の低温には強くなく、最低5℃から10℃を必要とするため、通常庭植えにはできません。

(2)ステップ2: 水やり

・アメリカンピンギ

水を好みます。用土を常に湿らせておくことが重要です。乾燥による水枯れが起きない様に気を付けなければなりません。上からの灌水と腰水を行いますが、鉢の底から深く腰水をします。夏場は水の減りが早いので、腰水に加えて上からの灌水を行います。

・メキシカンピンギ

アメリカンピンギに比べ乾燥気味に育てます。用土はやや湿っているくらいが適当で、腰水は行いません。灌水は夜間に行い、葉にかからないよう注意しましょう。(メキシカンピンギは過湿に弱いため、葉にかけると腐る原因になります)。

(3)ステップ3: 肥料

生育が著しく鈍いと感じる時以外、肥料は与えません。

5)要チェック!ムシトリスミレを元気に育てる7つのコツと増やし方

(1)土の種類・鉢植え

肥料分の少ない用土で栽培します。水苔を単体で、あるいは鹿沼土、ピートモス※、川砂を混合したものを用います。鉢植えは素焼きの鉢やプラスチック製の鉢がおすすめできます。メキシカンピンギについては、鉢は拘らなくて大丈夫です。※ピートモス:水苔などが堆積してつくられた泥炭。保水性に優れており、酸性。

(2)日常の手入れ

用土から葉に雑菌がついて枯れてしまうことがあります。苔やカビがつてきたら表面の用土を交換して、清潔に保ちましょう。

(3)水やり

・アメリカンピンギ

水を好むので、乾燥による水枯れが起きない様に気を付けましょう。上からの灌水と腰水を行いますが、鉢底から深く腰水をします。夏場は水の減りが早いので、腰水に加えて上からの灌水を行います。

・メキシカンピンギ

アメリカンピンギに比べ乾燥気味に育てます。腰水は行わず、用土はやや湿り気がある程度でOKです。灌水は夜間に行い、水が葉にかからないよう注意しましょう。(過湿に弱いため、葉にかけると腐る原因になります)。

(4)気を付けたい季節ごとの手入れ

・アメリカンピンギ(冬の管理)

アメリカンピンギは冬芽を作らないため、冬場も生育を続けます。そのため、屋外栽培の場合は、外気温が10℃を切った時点で屋内に移動したほうが良いでしょう。屋外に置いたままでも枯れてしまうことはありませんが、株が弱ります。冬の間も灌水を忘れずに。

・メキシカンピンギ(夏の管理)

日本の国内外で、食虫植物としてだけでなく山野草としても一部流通しているメキシカンピンギですが、日本の高温多湿に比較的弱いため、夏越しに若干気をつかいます。

(5)日当たり・置き場所

半日陰に置きます。真夏以外は、直射日光の当たる場所に置いてあげましょう。日光が大好きなので、こうすることで、屋内、屋外を問わず、元気に育ちます。ただ、日当たりが強すぎると葉焼けしてしまいますので、夏場は直暑日光が当たらないよう、遮光しましょう。メキシカンピンギについては、過湿に弱いため、雨水に当たらない置き場所を選びます。

(6)増やし方

・アメリカンピンギの増やし方:株分け

2月から5月に行います。P.プリムリフロラは葉の先に不定芽を作る特徴があり、葉先から自然に増えていきます。環境が合って調子がよいと、雑草並みの強い繁殖力で、どんどん増えていきます。増えて鉢がいっぱいになったら手でやさしく株を分けてやり、一つのアメリカンピンギに一つの鉢、という具合で、1つ1つ植えてあげます。

・メキシカンピンギの殖やし方:葉挿し

メキシカンピンギは葉挿しで殖やすことが適しています。冬芽になる時期12月から3月に行います。冬芽になり、多肉植物のように、うろこ状に小さくまとまったメキシカンピンギの葉を基部から3~4枚、など、増やしたい数だけ、手でやさしく1枚1枚外します。これらを湿らせた水苔の上に並べ、明るい日陰に密閉した状態で、ひと月ほどで発芽します。

(7)虫対策・健康的に育てるコツ

枯れ葉や黒くなった捕虫器官をハサミなどでこまめに除去してやりましょう。
雑菌や害虫の発生予防になります。ごくまれにナメクジの食害にあうことがあります。






まとめ

ムシトリスミレは北半球を多く原産地として自生している食虫植物です。日本でも、高山植物として有名で、寒地性のものが自生しています。シトリスミレはその属名から、「ピンギキュラ」とも呼ばれています。愛好家の中には愛情を込めて、「ピンギ」と呼称する人々もいます。ムシトリスミレを元気に育てるには、暖地性で比較的暑さに強く、湿った環境を好む北米産であるか、乾いた環境を好む、デリケートな扱いの必要となるメキシコ産(以後「メキシカンピンギ」と呼称します)かをチェックしておきましょう。

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