官公庁や病院、公園などでよく見かけるソテツ。暖かく、明るい雰囲気をつくってくれていますね。南国の大きなソテツの木が風に揺れる様子から、「雄々しい」という花言葉がついています。今回はそんなソテツの育て方やコツをご紹介します。
ソテツの育て方解説!10の栽培ステップと重要なコツ
1)ソテツの紹介
(1)ソテツとは
ソテツは、裸子植物ソテツ科の常緑低木です。雌雄異株で、1本の幹から大きい葉がどんどん出てくるタイプの植物です。またとても成長が遅いのも特徴の一つです。1億年以上前から存在している大変古い植物で「生きた化石」と言われています。
(2)科目・原産地
ソテツ科・ソテツ属で、原産地は九州や中国南部、インドネシアなどです。
(3)樹高・開花期
樹高は3~5m。8m以上になることもあります。開花期は6~7月ですが、10年に1度くらいしか花を咲かせることがないので、開花はとても貴重なものです。
(4)名前の由来
枯れかかったときに鉄釘を打ち込むと蘇るという言い伝えがあり、「ソテツ(蘇鉄)」という名前はそこからきています。実際に根本や幹に釘を打ち込まれていることがあります。
(5)期待できる効果・効能
葉には止血効果があります。花には咳止めや鎮痛作用が、根には滋養強壮作用があると言われます。中国では漢方薬として用いられているそうです。実にも健胃作用や滋養強壮作用があるそうですが、有毒なので、素人が使うのは危険です。
(6)栽培の難易度・耐寒性
栽培は簡単で、初心者でも育てられます。耐寒性はやや弱く、耐寒温度は5度と言われています。
2)種類の紹介!ソテツの5つの種類と特徴
ソテツの仲間は、日本や中国を始め、オーストラリア、インドネシアなど広い範囲で約120種が自生しています。現在ではほとんどが稀少種として扱われています。以下はヤシ研究の世界的権威者である佐竹利彦氏の分類に基づいています。
(1)ソテツ科ソテツ族
葉のつき方が獅子のたてがみに似ているシシソテツや葉が松葉のように二股に分かれているマツバソテツなどがあります。
(2)シダソテツ科シダソテツ族
オオバシダソテツは一見シダのように見えるので、シダ植物として分類されていましたが、後にソテツのような球花が発見され、ソテツの仲間だということが判明したそうです。
(3)ザミア科ディオオン族
ザミア科ですがソテツの仲間です。羽根のように見えるとても美しい葉を持つハネディオオンなどがあります。
(4)ザミア科オニソテツ族
同じくソテツの仲間で南アフリカが原産地です。世界にたった3本しかないと言われるウッドオニソテツ、とげとげしい葉を茂らせるスナオニソテツ、小型で青みがかった灰色の葉を持つヒメオニソテツなどがあります。
(5)ザミア科ザミア族
キューバ西部のみに自生する、絶滅の危機に瀕しているマイクロサイカスカロコマやこちらも「絶滅の危機にある植物」の世界第2位と言われるメキシコのセラトザミアヒルダエなどがあります。
3)グッズを整えよう!ソテツを育てるのに用意する5つのグッズ
(1)用土
観葉植物用の土または赤玉土(小粒)、腐葉土、パーライトを混ぜ合わせます。
(2)鉢
鉢植えの場合は苗よりも一周り大きい鉢を用意しましょう。
(3)移植ゴテまたはスコップ
苗の周りの土を盛らないといけないので、庭植えの場合、大きさによってはスコップが便利でしょう。
(4)霧吹きまたはじょうろ
種を蒔いた時は土を湿らせるために使います。
(5)割り箸または棒
植え付けの時、根の周りにしっかり土が入り込むように、割り箸などで土をつきます。
(1)から(4)はホームセンターや園芸店に置いてある安価なもので大丈夫です。(5)はもちろん家にある捨ててもいいものを使いましょう。
4)手順を理解しよう!ソテツの4つの栽培ステップ
ここでは苗から育てるステップをご紹介します。
(1)ステップ1: 苗の植え付け
5~9月頃に植え付けます。植え付けたらたっぷりと水を与えましょう。
(2)ステップ2: 剪定
枯れてきた葉はその都度つけ根から切り落としましょう。
(3)ステップ3: 冬越し
寒くなったら、霜が降りる前に軒下や室内に移動させましょう。庭植えの場合はわらなどで幹を覆い、防寒します。
(4)ステップ4:植え替え
鉢植えは4、5年に一回くらい、5~9月頃に植え替えをします。
5)効果的な栽培を!効果的に育てる10のコツ
(1)土の種類・鉢植え
用土は水はけのよいものを使います。地植えの場合は腐葉土を混ぜ、水はけが悪いようなら川砂も混ぜて植え付けます。鉢植えの場合は観葉植物用の土または赤玉土(小粒)5:腐葉土3:パーライト2の割合で混ぜた土を使いましょう。
(2)種のまき方
花が終わった10月頃に種を採取し、すぐに赤玉土(小粒)だけの土に浅植えします。日陰に置き、霧吹きやじょうろで土を湿らせておきます。発芽したら日の当たる場所に移してください。ただし芽が出るまでに、2~6ヶ月くらいかかります。
(3)苗の植え方
植え付けの適期は5~9月頃です。地植えの場合は水はけの具合により20~60cm程土を盛ります。そこに苗を植えて割り箸などで土を突きながら隙間をなくします。植え付け後は倒木を防ぐために支柱を立てておきましょう。最後にたっぷりと水を与えておきます。鉢植えの場合は苗よりも一回り大きな鉢に植えます。鉢底に軽石か鉢底石を入れ、用土を鉢の1/3くらいまで入れます。そこに苗を置いて周りを土で固めてください。
(4)植え替え
鉢植えの場合、4、5年に一回くらいの割合で植え替えをします。鉢底から根が出てきたり、水もちや水はけが悪くなったりしたら、さらに一回り大きな鉢に植え替えましょう。大きくしたくない場合は、根を少し減らして同じ大きさの鉢に植え替えてもいいです。やり方は「(2)苗の植え方」と同じです。
(5)剪定・日常の手入れ
葉が黄色く枯れてきたら根元から切り取ってください。葉のトゲは硬くてあたると痛いので気をつけましょう。ソテツはとても強く、乾燥気味が好きな植物なので、十分に日が当たる環境ならば放っておいても大丈夫です。
(6)肥料・水やり
ソテツは痩せた土地でも育ちますので、植え付け時か、3~5月頃に1回、緩効性の化成肥料か固形の油かすを株元に少し置いてやるだけでいいです。水やりも、地植えだったら植え付け後に与えるだけで、その後は必要ありません。鉢植えは、土が完全に乾いてから水をやってください。冬は生長しないため、乾燥させておいて大丈夫です
(7)季節ごとの手入れ
春から秋までは、3~5月に1回、少し肥料を与えるぐらいで、他は特にすることはありません。冬になったら、鉢植えは部屋の中や日当たりのよい軒下に移動させましょう。ソテツの耐寒温度は約5度なので、庭植えのものには、わらで幹を覆うなどの防寒対策をしましょう。葉が黄色く枯れてきたら、見苦しいので剪定しましょう。
(8)日当たり・置き場所
日当たりと風通しのよいところで育ててください。冬、暖かい地域ならば日当たりのよい軒下で、寒い地域では部屋の中の窓辺などで管理しましょう。
(9)増やし方
幹から不定芽という芽を出すことがあります。この芽が成長したら、5~9月の植え替えの時に切り離し、株分けをします。種まきで増やすこともできます。数十年経った大きなソテツには花が咲き、秋には赤い実がなります。種まきの方法は、「(2)種のまき方」を参考にしてください。発芽するまで2~6ヶ月かかりますが、発芽すればミニ観葉植物ができあがります。ゆっくりと気長に育ててくださいね。
(10)虫対策・健康的に育てるコツ
ソテツは病害虫に強く、あまり心配はありませんが、葉の表面がベタベタし、葉や幹に白っぽい斑点がある時は、カイガラムシなどの吸汁性害虫がついている証拠です。見つけたらすぐに薬剤で駆除しましょう。また、葉の先や周辺が褐色になり小さな黒点がついていたらペスタロチア病という感染症の一種です。
胞子が飛んで周りの植物にも伝染してしまいます。日頃から枯れた葉は剪定し、通気性をよくしておきましょう。それからクロマダラソテツシジミという30mmくらいのとても小さい蝶が柔らかい葉に卵を産み付けることがあります。幼虫は若くて柔らかい葉を食べ尽くし、芯の中にまで入り込みます。見つけ次第駆除してください。あとは水のやりすぎで根腐れをおこさないように注意しましょう。
6)要注意!育てる時に特に注意すべき3つのこと
(1)根腐れに注意
一生懸命にお世話をしようとして水をやりすぎると根腐れをすることがあります。甘やかしすぎないようにしましょう。
(2)霜に注意
耐寒温度は5度なので、霜に当たらないようにしてください。霜が降りる前に室内に取り込むか、ワラで巻いて防寒しましょう。
(3)実の毒に注意
ソテツの実には、サイカシンという有毒物質が含まれています。そのまま食べてしまうと、嘔吐や呼吸麻痺などの症状が起きることがあるので、小さいお子様がおられるところは特に注意してください。
7)ソテツの成長後の効果的な用途とは
(1)官公庁や病院などに
建物の前や敷地にあることで、落ち着いた温和なムードを醸し出します。初夏にはきれいな新葉が伸びてきますので、さらに明るい気持ちにさせてくれます。
(2)ロータリーに
とても丈夫な植物ですし、生長が遅いのでロータリーに最適です。
(3)庭や玄関前に
お世話が簡単なので、アクセントとしておすすめです。
(4)お部屋をおしゃれに演出
観葉植物としてお部屋に置くと、インパクトがあり、すてきなくらしの演出に役立ちます。
8)ここが魅力!ソテツを育てる3つの魅力とは
(1)手がかからない
手がかからず、初心者でも簡単に育てられるのが一番の魅力です。
(2)見通しが立てやすい
枝分かれせずに一本の太い幹の先に葉を茂らせるので、計画的に庭づくりをすることができます。
(3)育てる喜びを感じることができる
子育ては一夕一朝で成長を見ることはできません。ソテツも同じで、何ヶ月もかけて芽が出、少しずつ大きくなっていきます。花は10年に1度くらいしか見ることはできませんが、そんな花が見られたら今までの苦労も忘れ、喜びで一杯になることでしょう。
今回のまとめ
1)ソテツの紹介
2)ソテツの4つの種類と特徴
3)グッズを整えよう!ソテツを育てるのに用意する5つのグッズ
4)ソテツの4つの栽培ステップ
5)効果的な栽培を!効果的に育てる10のコツ
6)要注意!育てる時に特に注意すべき3つのこと
7)ソテツの成長後の効果的な4つの用途とは
8)ソテツを育てる3つの魅力とは