気難しく育てにくそうな洋ランの中でも、デンドロビウムの仲間は比較的育てやすいと言われています。育て方のちょっとしたコツを押さえれば一般の家庭でも美しい花を咲かせることが可能です。
今回はデンドロビウムの育て方・栽培のコツ・注意点をお伝えします。
デンドロビウムの育て方!7つの栽培のコツと注意点とは
1)デンドロビウムの紹介
(1)デンドロビウムとは
デンドロビウムは熱帯地方に生息する植物で、木の枝や幹などに根を張りつかせて育つ着生ランです。原種だけでも1000種以上あり、更に交配種も数多く作り出されているため、色や形のバリエーションは多岐にわたります。
(2)科目・原産地
ラン科セッコク属に属する植物の総称です。東南アジアを中心として熱帯・亜熱帯アジアからオセアニアにかけて分布しています。
(3)草丈・開花期
草丈は30~80cmです。開花期は品種により異なりますがたいだい12~5月になります。
(4)名前の由来
デンドロビウムという言葉は、ギリシア語で「木」を意味する「デンドロ」と「生じる」を意味する「ビウム」からきており、合わせて「樹木に生じる」という意味になります。
(5)期待できる効果・効能
漢方では胃の陰を補うとされており、健胃や強壮作用があると言われています。また、民間薬として喉の炎症や咳止めなどに使われます。
(6)栽培の難易度・耐寒性
ランの仲間の中では比較的育てやすい品種で、初心者向けのランと言われています。ランは耐寒性が弱く栽培には温室が不可欠ですが、デンドロビウムは耐寒性も強く、温室なしでも育てることができます。
2)デンドロビウムの5つの種類と特徴
デンドロビウムは、品種改良の元となった原種によりいくつかの系統に分けられます。ここでは、代表的な5つの系統をご紹介します。
(1)ノビル系
デンドロニウム・ノビレという野生種を改良した系統で、単にデンドロビウムと言えばこの系統を指すことが多いです。ノビル系は日本で最も多く栽培されている品種で、品種改良も盛んに行われています。
(2)デンファレ系
デンドロビウム・ファレノプシス系の略です。花の形や咲き方がファレノプシス(胡蝶蘭)に似ているため、この名がつけられました。
(3)フォルモサム系
デンドロビウム・フォルモスムを元とした品種です。この系統の代表的なものにフォーミディブルという品種があるため、フォーミディブル系とも呼ばれます。春から初夏にかけて、大きな花を咲かせます。
(4)キンギアナム系
デンドロビウム・キンギアナムを元に作り出された交配種です。葉の間の節から伸びた花茎に、小さなたくさんの花を穂のように咲かせます。香りの強いものが多いのも特徴です。
(5)カリスタ系
花が房のように垂れ下がる品種をまとめてカリスタ系と呼びます。花数が多く豪華に見えますが、花保ちはあまりよくないため切り花には向きません。
3)デンドロビウムを育てるのに用意する3つのグッズ
デンドロビウムは開花した状態で購入することが多く、購入後しばらくはそのまま楽しめるようになっています。ここでは、デンドロビウムの開花株を購入する際に一緒に用意しておきたいものをご紹介します。
(1)肥料
置き肥と液肥を購入します。置き肥は、緩効性の固形肥料や発酵油かすに骨粉を混ぜたものが適しています。液肥は洋ラン専用のものを購入するといいでしょう。緩効性肥料としてはホームセンターや園芸店で購入できる「マグァンプK大粒」がお勧めです。250gで600円前後です。
洋ラン専用の液肥は「ハイポネックス ストレート 液肥 洋ラン用」が手軽に使えるのでお勧めです。600mL入りが600円前後で、園芸店やインターネットで購入できます。
(2)霧吹き
デンドロビウムは湿度の高い環境を好むので、葉に直接霧吹きで水を吹きかけます。特に乾燥の激しい時期は一日に1~2回葉水を与える必要があります。霧吹きは、100円ショップで手に入るもので十分です。
(3)剪定ばさみ
咲き終わった花は一つずつ丁寧に摘み取る必要があるので、剪定用のはさみを用意しておきましょう。剪定ばさみは安いものだと1000円程度からありますが、ネット通販などよりは、園芸店などで実物を確認して購入することをお勧めします。
4)デンドロビウムの6つの栽培ステップ
デンドロビウムは冬から春にかけて開花株を購入するというケースが多いので、開花株購入後の管理についてご紹介します。
(1)ステップ1: 寒さに慣らす
ランの仲間は園芸店やホームセンターでは温室で管理されています。温室以外の場所で育てるのであれば、寒い日は新聞紙でくるむなど保温に気を配り、徐々に寒さに慣らせていく必要があります。但し、どんなに寒くても5℃以下にはならないように気をつけてください。
(2)ステップ2: 花がら摘み
花が終わったら花の付け根から切り取りますが、茎は切り取らないようにします。
(3)ステップ3:施肥
気温が15℃を超えたら、日当りのいい室外に鉢を移動します。水切れに注意しながら管理し、週に1回のペースで液肥を与えて育てます。但し、8月以降は肥料を与えないようにします。
(4)ステップ4:寒さに当てる
デンドロビウムはある程度の寒さに当てないと花芽がつかないので、最低気温が8度くらいの日が2週間ほど続くまで室内には入れないようにします。
(5)開花
乾燥に気をつけながら管理すれば、早ければ1月くらいから花が咲き始めます。
(6)植え替え
鉢一杯に根が広がったら植え替えをしましょう。植え替えのペースは、2~3年に1回程度です。適期は、新芽が出てくる4月頃から5月にかけてです。
5)デンドロビウムを効果的に育てる7つのコツ
(1)土の種類・鉢植え
植え込み用には水苔を用います。市販の洋ラン専用の培養土を用いてもOKです。なお、市販のデンドロビウムの鉢に発泡スチロールが入っていることがありますが、通気性や水はけをよくするためのものなので、植え替え時も捨てずに利用しましょう。
(2)剪定・日常の手入れ
咲き終わった花がらは取り除きますが、花が咲き終わった茎には新芽に養分を与える役割があるので切り取らないようにします。2~3年たって弱ってきたら切り取ります。
(3)肥料・水やり
冬は生育を停止している状態なので、開花中であっても肥料は与えません。4~7月に週1回のペースで液肥を与えます。また、4~7月に月1回のペースで置き肥を施します。
肥料を与えるのは7月までで、8月以降は与えないようにします。水は、鉢の表面が乾いたらたっぷりと与えますが、冬場は与えすぎると根腐れを起こすので注意します。
(4)季節ごとの手入れ
寒い時期は室内で、暖かくなったら室外で日光を十分に当てて管理します。暑い季節は水切れに気をつけてこまめに水やりをする必要がありますが、気温が下がってきたら頻度を減らします。
(5)日当たり・置き場所
日当りを好むので、生育期は半日以上日光の当たる場所に置きます。但し、夏の強い日差しで葉やけを起こすので、真夏は遮光するようにしてください。
(6)増やし方
株分け、高芽の植え付け、さし芽で増やすことができます。高芽とは茎の途中から出てくる芽のことで、根が生えてきますから根ごと茎から切り取って水苔とともに小さい鉢に植えつけます。なお、高芽から株を増やすつもりがないのなら、根が出てくる前に取り除きます。
(7)虫対策・健康的に育てるコツ
カイガラムシやなめくじがつきやすいので、見つけ次第取り除きます。被害がひどい場合は薬剤を散布します。また、葉に黒い点ができる「黒点病」が発生したら、速やかに専用の薬剤を散布してください。
6)デンドロビウムを育てる時に特に注意すべき3つのこと
(1)乾燥に注意
デンドロビウムは高温多湿の環境に自生する植物なので乾燥を嫌います。特に冬場は空気が乾燥しやすいので、葉水を欠かさないようにしましょう。
(2)肥料は7月まで
いつまでも肥料を与え続けていると、花芽がつかず高芽ばかりになってしまいます。8月以降は肥料を完全に打ち切るようにしてください。
(3)寒さに当てる
ある程度の寒さに当たらないと花芽がつかないという習性があります。最低気温が8度くらいの日が2週間ほど続くまでは戸外で管理しましょう。
7)デンドロビウムの成長後の効果的な用途とは
(1)贈り物に
豪華で美しい花が長期間楽しめるデンドロビウムは、新築祝いなどの様々なお祝い事への贈り物にぴったりです。翌年も花を咲かせることが可能なので、育て方のメモなどを添えるといいでしょう。
(2)フラワーアレンジに
アレンジ次第でカジュアルにもフォーマルにもなるので、アレンジメントの素材として重宝します。
(3)食用花として
デンファレという品種はエディブルフラワーとしても人気があります。ビタミンを豊富に含み、抗酸化作用もあるので美容にもいい食材です。但し、食べられるのは食用として流通しているものに限ります。
8)デンドロビウムを育てる魅力とは
(1)育て甲斐がある
洋ランと言えば気難しい花というイメージなので、綺麗な花を咲かせることができたらその喜びは格別です。
(2)バリエーションが多い
膨大な数の品種があるので、好みにぴったり合った花を見つけることも可能です。
(3)長く楽しめる
管理をきちんとすれば長期間ゴージャスな花を楽しむことができます。
今回のまとめ
1)デンドロビウムの紹介
2)デンドロビウムの5つの種類と特徴
3)デンドロビウムを育てるのに用意する3つのグッズ
4)デンドロビウムの6つの栽培ステップ
5)デンドロビウムを効果的に育てる7つのコツ
6)デンドロビウムを育てる時に特に注意すべき3つのこと
7)デンドロビウムの成長後の効果的な用途とは
8)デンドロビウムを育てる魅力とは