盆栽のわき役というイメージの強い苔ですが、工夫次第で立派な主役にもなり得ます。自己主張が少ない分、様々な楽しみ方ができる苔。
コツを押さえれば育て方はそんなに難しくありません。今回は苔の育て方・栽培のコツをご紹介します。
苔の育て方解説!6つの栽培のコツと注意点とは
1)苔の紹介
(1)苔とは
維管束を持たない陸上植物をコケ植物と総称します。コケ植物は、蘚類、苔類、ツノゴケ類の3種類に大別されますが、園芸に用いられるのは、苔類に属するものが多いようです。
日常用語としては、菌類と藻類の共生体である地衣類も「コケ」に含まれます。
(2)草丈・開花期
地面を這うように成長するので、草丈は一定ではありません。また、苔には花は咲きませんが、スギゴケなどの雄株にできる「雄器」を花に見立て「苔の花」と呼びます。
「苔の花」が咲く季節は、苔の種類によって「晩秋~初春」と「春~初夏」の2タイプに大きく分けられます。
(3)名前の由来
木の幹や岩などに生えている様子が、短い毛のように見えたことから「木毛」「小毛」と呼ばれていたことに由来するといわれています。
(4)育てる難易度・耐影性・耐寒性
苔と一言で言ってもその種類は膨大で、生育環境も一定ではありません。一般的に、ジメジメとした場所に生息するイメージがありますが、種類によっては直射日光を好むものもあるなど耐影性が異なるため、育てる種類の苔に適した環境を用意する必要があります。
苔の好む環境を用意できれば、育て方はそれほど難しくはありません。耐寒性は比較的強く、極寒地以外では対策は必要ないでしょう。
2)苔の7つの種類と特徴
苔の種類はとても多く奥の深い植物ではありますが、最近では園芸種として市販されているものも多く、清潔な環境で栽培されたものが、手軽に入手できるようになっています。
ここでは、比較的メジャーな7種類の苔をご紹介します。
(1)山苔(ホソバオキナゴケ、アラハシラガゴケ)
「苔寺」として有名な京都の西方寺で見られる苔で、苔園芸ではかなりポピュラーな種類です。暗く湿った環境を好むため、屋内栽培に適しています。
丸いコロニーを形成したホソバオキナゴケは、饅頭そっくりのフォルムになるので「饅頭苔」とも呼ばれます。
(2)ハイゴケ
その名の通り、横へと這うように広がっていくほふく性の苔です。半日陰~日の良く当たる場所を好み、丈夫で育てやすい種類です。
庭園や苔玉によく使われます。
(3)スギゴケ
苔庭や盆栽に利用される最もメジャーな苔です。直射日光と乾燥を好むという苔にしては珍しい性質を持ちます。日当たりを好む為、室内栽培やテラリウムには向きません。
(4)スナゴケ
スギゴケ以上に強い直射日光を好みます。土壌を選ばず頑強で育てやすいので、初心者向きでもありますが、日当たりが必要となるため屋外栽培が向いています。
(5)カモジゴケ
一年を通して美しい緑色を保つため、冬期の園芸で重宝する品種です。半日陰を好みますが、日光が少ない方が美しい緑色になるようです。
繁殖力も旺盛で育てやすい苔です。
(6)タマゴケ
標高500メートル以上に分布する高山種で、半日陰の湿った環境を好みます。夏の暑さが苦手なので対策が必要です。
丸い雄器が美しく人気がありますが、やや育てにくい品種かもしれません。
(7)ヒノキゴケ
京都嵯峨野の祇王寺で見られることで有名な苔です。大型で美しく、テラリウムの材料として人気があります。平地に育つ苔なので比較的丈夫で育てやすい種類と言えます。
薄暗い湿った環境を好むので、室内栽培に向きます。
3)苔を育てるのに用意するグッズ
苔をどのような形で楽しむかによって、必要なグッズは異なります。ここでは、苔テラリウムを作るのに必要なグッズをご紹介します。
(1)苔
好みの苔を用意します。天然の苔を採取して植えるという楽しみ方もあるのですが、苔栽培セットなどで好みの苔を栽培してから植えるのがお勧めです。
(2)土台
苔を植え付ける土台は、土のみでは水はけが悪くなるので、ハイドロカルチャー用のハイドロコーンや竹炭を用意します。
竹炭は1Lで1000円前後、ハイドロコーンは100円均一ショップで入手できます。用土は、園芸ショップで売られている観葉植物用の用土で十分です。
(3)容器
広いガーデン風にするのであれば大きめのガラスケースが必要ですが、ミニサイズの苔テラリウムを作るのであれば、100円均一ショップで手に入るガラス容器や、ジャムの空き瓶などでもOKです。
(4)植え付けのための道具
砂を瓶に入れるためのスプーン、苔を植え付けるためのピンセットが必要です。
4)苔の4つの栽培ステップ
苔は、成長したものを購入するか、天然のものを採取して来て、植え付けるというのが主流になりますが、ここでは苔栽培キットを用いたシャーレでの栽培方法をご紹介します。
なお、苔栽培キットはネット通販などで800~2000円程度で入手できます。
(1)ステップ1:シャーレに土を入れる
キットにある専用のシャーレに、専用の土を入れます。
(2)ステップ2:苔の素を入れる
乾燥状態の「苔の素」をその上に入れ、よくほぐして土と馴染ませます。
(3)ステップ3:水やり
霧吹きで万遍なく水を浸み込ませます。
(4)ステップ4:成長
シャーレのふたを閉めて、直射日光のあたらない場所に置きます。ふたは閉めたままでOKです。
5)苔を効果的に育てる6つのコツ
(1)土植え・鉢植えのコツ
シャーレ栽培で苔が成長して来たら、土を足す必要があります。キットに付属している土か、苔テラリウム用の土を苔の上から足し、よく湿らせておきます。
(2)肥料・水やりのコツ
肥料を与えすぎると枯れる恐れがあるので、肥料は必要ありません。水やりは、芽が出てくるまでは乾かないようこまめに。
成長したら、週1回程度で十分です。
(3)日当たり・置き場所のコツ
苔の種類により好む環境が異なるので、明るい場所や半日陰など、種類によって合った場所に置いてください。どんな種類でも、直射日光は避けましょう。
(4)増やし方のコツ
胞子を採取して増やす方法や、乾燥させてほぐした苔を撒いて育てる「まきゴケ法」が有名です。
(5)季節ごとの対策
種類により異なりますが、夏の暑さに弱い品種を育てる際は、温度調整に気をつけましょう。
(6)虫対策・健康的に育てるコツ
特に苔玉などでは、カビが生えたり腐ったりするケースが多く見られます。風通しがよく、程よく日光が当たる場所に置くことが大切です。
6)苔を育てる時に特に注意すべきこと
(1)肥料をやらない
苔は光合成と水分で育つので、肥料は特に必要ありません。
(2)日当たりを調整する
日照の好みは苔の品種によって全く異なるので、育てようとしている苔がどのような環境を好むのかを事前に調べておきましょう。
(3)風通しを良くする
苔といえばじめじめした場所に生えるというイメージがありますが、育てる際にあまり湿度の高い環境に置くとカビが生えたり腐ったりするので注意が必要です。
7)苔の成長後の効果的な3つの用途とは
(1)苔玉
苔園芸の一つとしてすっかり人気が定着した苔玉。苔玉作成キットも販売されており、手軽に楽しむことができますが、
自分で育てた苔で手作りの苔玉を作るのも格別です。
(2)苔テラリウム
テラリウムは、ガラス容器の中に「小さな生態系」を作るものです。手入れが楽で、種類の豊富な苔はテラリウムの主役として大活躍します。
(3)鉢植えの主役に
盆栽のわき役に使われることの多かった苔ですが、品種によっては主役として楽しむこともできます。
8)苔を育てる魅力とは
(1)世話が要らない
肥料が必要なく、剪定やなどの手間も全く要らない苔は、忙しい現代人のライフスタイルにもピッタリです。
(2)癒される
日本独特の「わび・さび」を感じさせる苔は、テラリウムや苔玉など現代風のアレンジを加えても、独特の癒しの空気を持っています。
(3)手軽
苔玉などは多少の準備が必要になりますが、苔テラリウムは苔さえあれば手元の空き瓶ですぐに始めることができます。
今回のまとめ
1)苔の紹介
2)苔の7つの種類と特徴
3)苔を育てるのに用意するグッズ
4)苔の4つの栽培ステップ
5)苔を効果的に育てる6つのコツ
6)苔を育てる時に特に注意すべきこと
7)苔の成長後の効果的な3つの用途とは
8)苔を育てる魅力とは