独特の匂いで好みの別れる、尖った魅力のパクチー。意外と古くから日本でも使われていたこの植物を、自分で育ててみたい、というパクチー好きの方々へ向け、育て方を一から解説いたします。
パクチーの栽培のコツを抑えて、楽しく育ててみましょう。
パクチーの育て方解説!栽培の7つのコツと注意点
1)パクチーの紹介
(1)パクチーとは
和名の「コエンドロ」と聞いてもすぐに判る人は少ないかもしれませんが、コリアンダー、シャンツァイ(香菜)、そしてパクチーと聞けば多くの方が知っていると答えるでしょう。呼び名は様々ですが、全て同一の植物で、世界各地で様々な使われ方をされてきました。
古くは古代エジプトで、その抗菌作用でミイラの防腐処理などにも使われ、ヨーロッパでは薬草として利用されてきました。
しかし、その強烈な臭気はやはり好みが別れるようで、分類学で有名な植物学者のリンネは、匂いの分類においてfaul(悪臭・腐敗臭)の分類にコリアンダーを含めるなどしています。
日本に伝わった時期は定かではありませんが、奈良時代には仏教の広まりと共に、在家の五辛として肉食と共に禁じられるなどして、あまり定着はせず、一部の発酵ずしやイノシシ肉などの、匂い消しとして用いられるに留まりました。
その後西洋から再び伝わり、その際にポルトガル語のcoentroが現在の和名コエンドロとなりました。
(2)科目・原産地
セリ目セリ科コエンドロ属の一年草で、原産地は地中海沿岸
(3)草丈・開花期
環境がよければ50cm以上となり、開花は5月上旬から
(4)名前の由来
和名のコエンドロや英名コリアンダー(coriander)は、古代ギリシャ語まで遡れるが、その意味としてはキャラウェイやクミン、カメムシもしくは南京虫など、諸説あり定かではない。
タイ語のパクチーの意味は、「生食の葉」で、実際にタイ料理での使用法に沿っている。
(5)効能とは
消化促進や毒素排出、抗菌作用などがあるとされ、食べ過ぎやデトックス、風邪予防などに効果があるとされ、ハーブティーとして用いられてきました。
(6)難易度・耐寒性とは
他の地中海沿岸が原産のハーブと同じように、比較的丈夫で育てやすい部類にはいります。耐寒性はそれほどないので、寒冷地では春蒔きを行います(後述)。
2)パクチーの2つの種類と特徴
(1)パクチー
一般にパクチーやコリアンダーと呼ばれる物は全てこれです。
(2)パクチー・ファラン
ノコギリコリアンダーとも呼ばれ、東南アジアや中南米でパクチーと同じように用いられるが、パクチーより更に強烈な香りだと言われている。同じセリ科のヒゴタイサン属という別の植物です。
3)パクチーを育てるのに用意する6つのグッズ
苗はフラワーショップやホームセンター、種やグッズ類は大きめの園芸店やホームセンター、もしくはネットショッピングで揃える事ができます。
(1)苗もしくは種
苗はハーブコーナーを探すと良いでしょう、「パクチー」か「コリアンダー」の名で売っています。根が繊細で移植を好まないので、あまり大きくなっていない物が良いです。
種は店舗に無いようでしたらネットショッピングなどで購入するのもいいでしょう。種も苗も200円前後で購入できます。
(2)鉢(5号以上)またはプランター
庭へ直接植えるなどの場合は不要、鉢はプラスチック製で100円前後、プランターも数百円から購入できます。また基本的に屋外で育てる物なので受け皿などは不要です。
見た目も楽しみたいなら、陶器製の物を選んだり、鉢カバーやコンテナ等をお好みで。
(3)土
ハーブ用の土などが5リットルで500~1000円前後で購入できます、参考として5号の鉢で1リットルほどになります。
また腐葉土と赤玉土を混ぜて作ることもできますので、他の植物も育てる予定などあれば、そちらもお薦めです。
(4)スコップ
園芸用の小型の物で移植ゴテなどとも呼ばれ、数百円~です。
(5)肥料
後述の秋蒔きを行う場合は、液体肥料を。土を再利用する場合などは土に混ぜるタイプの肥料があると良いでしょう。
液体肥料は小容量のもので400円前後、 土に混ぜる有機肥料は1リットル数百円で購入できます。
(6)その他、病害虫対策品
病気の原因となる泥はねを防止するためのバークチップ、アブラムシ対策の木酢液など、必要に応じて。どちらも数百円から購入できます。
4)パクチーの4つの栽培ステップ
(1)ステップ1:種まき
基本は9月から10月頃の秋蒔きですが、霜の心配がある寒冷地などでは、3月から4月にかけて春蒔きをします、遅くなると充分に育たないので、暖かくなったら早めに蒔きましょう。
一箇所に3,4粒ほどの種を、鉢なら3箇所ほど、プランターなら5cm間隔程度で蒔き、7mmほど土をかけます。
(2)ステップ2:追肥
秋蒔きを行った場合は、温かくなる前に液体肥料などで追肥を行います。
(3)ステップ3:間引き
本葉(双葉の後に生えてくるギザギザの葉)が4,5枚ほどになったら、苗の間隔が15~20cmくらいになるように、葉を収穫しつつ間引きます。
(4)ステップ4: 収穫
葉が10枚以上になったら、下から収穫していきます。また果実は完熟して黄色~茶色になるのを待って収穫します。
5)パクチーを効果的に育てる7つのコツ
(1)土・鉢植えのコツ
土を自分で作る場合は、赤玉土と腐葉土を6:4~7:3くらいの割合で混ぜて使います。また土を再利用する時は、有機肥料を混ぜ込みます。
苗から育てる場合は、大きくならないうちに鉢植えを行ってください。
(2)日常の手入れのコツ
雨や風で葉や茎に泥がつくと、病気にかかりやすくなるので、泥が気になるようならば置き場所を工夫するか、土の上にバークチップなどを敷くことで防ぐことができます。
(3)肥料・水やりのコツ
追肥は秋蒔きの場合、温かくなる前2月頃に1度、春蒔きならば必要ありません。水は土の表面が乾いたらしっかりとしめらせますが、やり過ぎると根腐れを起こすので程々に。
夏場は乾きやすいので、こまめに土をチェックしましょう。
(4)日当たり・置き場所のコツ
日向を好みますが、あまり育ちすぎると葉が固くなるので、夏場は半日陰くらいの場所に移動させると良いでしょう。
(5)増やし方のコツ
種で増やします、果実は2つの種がくっついた状態なので、分けたい場合は割って蒔きましょう。
(6)虫対策・健康的に育てるコツ
アブラムシには忌避剤として木酢液、また牛乳を薄めたスプレーも用いられますが、乾燥した際牛乳の膜で窒息させる方法なので、雨や高湿の日を避けて使います。
ナメクジ、蛾や蝶の幼虫は見つけたら割り箸などで取り除きましょう。食用とすることを考え、殺虫剤などは避けます。
(7)収穫のコツ
成長は早いので、葉が固くなる前に下の方から遠慮せずに収穫しましょう。果実はしっかり完熟させてから茎ごと収穫します。葉は積極的に、果実はしっかり待つ。
・その他
基本的な育て方を紹介しましたが、寒さ対策などしっかりできれば、年中収穫することも可能ですので、慣れてきたら挑戦してみては如何でしょう。
6)パクチーの収穫後の効果的な3つの用途
(1)食材
葉を香味野菜として利用します、パクチーやシャンツァイと呼んだ場合、この使い方を指すことが一般的なようです。
トムヤムクンやフォーなどには欠かせませんし、もちろん中華料理にも、また中南米の料理などにも使われます。
薬味としてネギの代わりに、またシンプルにサラダに使ったり、そのサラダに掛けるドレッシングに使ったり、枚挙に暇がありません。
(2)ハーブティー
果実を乾燥させたものをハーブティーとして使います、こちらの香りは比較的好まれ、薬効も果実のほうが高いと言われており、葉の匂いが苦手な方にもお薦めです。
(3)スパイス
これが最も一般的な使われ方かもしれません。カレーの重要なスパイスとして、果実を粉末にしたものを使います。コリアンダーという呼び方は、スパイスかハーブティーを指すことが一般的なようです。
7)パクチーを保存する場合の2つのポイント
(1)葉
収穫後はすぐにビニール袋に入れて冷蔵庫で保存し、早めに使い切ります。
(2)果実
風通しのよい日陰に茎ごと吊るして、しっかり乾燥させます、乾燥させたら果実を摘みとって容器に保存します。
8)パクチーを育てる魅力とは
(1)甘い茎
大きく育ったパクチーは薹(とう)が立って、硬くなってしまいますが、茎の周りの皮を剥いだ柔らかい部分は、食べると甘くて美味しいと言われています。これは外食ではなかなか味わう事ができない楽しみです。
(2)花を愛でる
あまり注目されませんが、白い可憐な花が咲きます。目で楽しんだ後は、エディブルフラワーとして食べることもできます。
(3)命を頂く
愛情をもって世話をした植物が、すくすく育っていく姿は嬉しいものです。また食べ物に対するありがたさを感じ、植物も生きているという、普段は忘れてしまいがちな事実を思い出すきっかけになれば幸いですね。
今回のまとめ
1)パクチーの紹介
2)パクチーの2つの種類と特徴
3)パクチーを育てるのに用意する6つのグッズ
4)パクチーの4つの栽培ステップ
5)パクチーを効果的に育てる7つのコツ
6)パクチーの収穫後の効果的な3つの用途とは
7)パクチーを保存する場合の2つのポイント
8)パクチーを育てる3つの魅力とは