初夏になると出回る「そら豆」。日本では塩茹でにして、子供のおやつや酒のつまみとして楽しむのがポピュラーですね。採りたてで鮮度抜群のそら豆は味も格別です!今年の秋はそら豆の家庭菜園を始めてみませんか?今回はそら豆の栽培方法をご紹介します。
要チェック!そら豆の栽培手順と7つの育て方のコツとは
1)そら豆の紹介
(1)そら豆とは
そら豆は、エジプトなどでは、今から4000年以上も前から食用として栽培されていました。日本には17世紀ころに中国から渡来し、本格的な栽培が始まったのは、明治時代になってからです。ヨーロッパやアメリカの優良品種が導入されたことで、日本全国での栽培が広がりました。葉は羽のような形の複葉をしており、実は長細い楕円型をしています。主に食用に用いられ、塩茹でや甘納豆、煮豆、餡などに加工されています。また、意外と知られていませんが、中華料理に欠かせない調味料・豆板醤は、そら豆を発酵させて作られたものです。
(2)科目・原産地
そら豆は、マメ科ソラマメ属の一年草です。原産地は諸説ありますが、西南アジアや地中海沿岸、アフリカが濃厚のようです。
(3)草丈・開花期
草丈は60~1m程に生長します。4~5月頃に開花期を迎え、白色または薄紫色の花びらの中央に黒斑のある蝶のような花を咲かせます。
(4)名前の由来
そら豆は、「空豆」や「蚕豆」と2通りの漢字で表記されることがあります。「空豆」は、サヤが空に向かって実ることが由来とされています。一方の「蚕豆」は、蚕(かいこ)が繭を作る時期に美味しく実る豆であることが由来とされています。
(5)育てる難易度・耐寒性
空豆は比較的育てやすい野菜なので初心者の方でも挑戦しやすいです。本来は耐寒性が弱く、温帯地域での栽培に限られていましたが、現在のそら豆は品種改良により耐寒性が強くなったため、全国で栽培されています。
(6)期待できる効果・効能
・疲労回復
そら豆にはビタミンB1が含まれており、疲労回復に効果があります。
・精神安定/不眠症改善
そら豆に含まれるレンチンには、副交感神経の活性化や、睡眠の質の向上などの効能があるとされています。そのため、イライラや不安などを静める精神安定効果や、不眠症の改善に効果があります。
・貧血予防/改善
そら豆には鉄分やたんぱく質、銅、ビタミンC、ミネラルなど、血液を作る材料が豊富に含まれています。そのため貧血の予防・改善に効果があります。
また、女性に欠かせない葉酸においては、青果類の中ではトップクラスの含有量を誇っていますので、特に妊娠中や授乳中の方にはぜひ摂取してもらいたい食材です!
・デトックス効果
そら豆はカリウムを非常に多く含んでいます。カリウムは体内の余分な水分を排出させ、代謝を促す作用があります。そのため、尿が出やすくなり、むくみ解消や二日酔いの改善に効果があります。
・食欲増進
夏場、大量の汗をかくことでカリウムが失われると、脱力感や食欲不振などが引き起こされます。いわゆる「夏バテ」です。そら豆を摂取することでカリウムを補給できますので、食欲増進や夏バテ予防に効果があります。
・便秘予防/改善
そら豆の皮は食物繊維が豊富です。そのため、便秘の予防・改善に効果があります。
・ダイエット
そら豆に含まれる食物繊維は、不溶性食物繊維が主です。不溶性食物繊維は水を含むと膨らむ性質を持ちます。そのため、満腹感を得られやすくなり、食べすぎの防止になります。また、亜鉛やレンチンなども含んでいるため、代謝を高めてくれます。そのためダイエットサポート効果が期待できます。
・美容
そら豆にはビタミンB2やビタミンB6も含まれているため、肌や髪、爪などを美しく保つ効果があります。また、肌の新陳代謝を促進する亜鉛も多く含まれているので、肌トラブルの予防や改善にも効果があります。その他、抗酸化作用のあるビタミンCやβカロテンも含まれているので肌の老化を防ぐアンチエージング効果も期待できます。
2)種類はあるの?そら豆の2つの種類と特徴
そら豆は大きく2つの種類に分けられています。
(1)一寸そら豆
豆の大きさが約一寸(約3㎝)にもなる大粒のそら豆です。1つのサヤに2~3粒ほど同じ大きさの豆が並んでいます。そのためサヤはずんぐりとした姿に実ります。大粒に育つため、収穫までには時間がかかりますが、甘みがあり、火を通すとホクホクとした食感が最高に美味です。現在、日本で一般的にそら豆と呼ばれているのは、この一寸そら豆の品種です。
<代表的な品種>
・仁徳一寸
サヤと豆が鮮やかな濃い緑色をしているのが特徴です。草丈は120㎝程に生長します。収穫量が多く、丈夫で栽培しやすいです。柔らかく、甘みが強いです。
・打越一寸
サヤの色が濃緑色で光沢があります。収穫量が多く、その味は美味です。丈夫で栽培しやすく、寒さに比較的強いのが特徴です。
(2)長さや
1つのサヤに中粒の豆が5~6粒入っています。そのため、サヤが細長いです。一寸そら豆よりも小粒ですが、味や栄養価は変わりません。晩生種と早生種があり、現在の日本では生産量はわずかです。しかし、栽培しやすい家庭菜園向きの品種もあります。
<代表的な品種>
・さぬき長さや早生
四国で発達した品種です。長さ20㎝程のさやがたくさん付き、収穫量が非常に多いのが特徴です。草勢旺盛で栽培しやすく、表皮ごと食べても美味しいです。
・早生ソラマメ
1つのサヤに、大きさが2㎝程の小粒の豆が4~5粒入っています。豆は小粒ですが、その分、生育がとても早いのが特徴です。草丈が低い矮性種ですが、収穫量はとても多いです。
3)グッズを整えよう!栽培するのに必要な9つのグッズ
(1)そら豆の種または苗
(2)土
プランターまたは鉢で栽培をする場合は必要となります。市販の野菜用培養土を使えば準備が楽です。自分で土作りから行う場合は、赤玉土(小粒)、腐葉土、バーミキュライトを用意しましょう。
(3)苦土石灰・堆肥
畑などに地植えする場合は用意しましょう。
(4)野菜用の化成肥料
(5)支柱・紐
支柱は80㎝以上のものを用意しましょう。
(6)プランターまたは鉢
プランターまたは鉢で栽培をする場合は用意しましょう。プランターの場合は、深さ30㎝以上ある大型のものを選びましょう。鉢の場合は10鉢以上の物を選びましょう。植え付けの目安としては、長さ45㎝のプランターで2~3株。10号鉢なら1~2株です。
(7)鉢底石または軽石
プランターまたは鉢で栽培をする場合は用意しましょう。
(8)ビニールシートなどのマルチフィルム
地植えの場合、必要となります。
(9)その他
軍手、スコップ・シャベル・クワなど
4)正しいな栽培方法を!そら豆の4つの栽培ステップ
(1)ステップ1:土作り
・地植えする場合
植え付けの2週間前までに、植え付け場所の土に苦土石灰と堆肥を適量混ぜ込み、よく耕しておきましょう。1週間前になったら、化成肥料を混ぜ合わせ、高さ10㎝、幅60~100㎝の畝を作ります。
・鉢植えの場合
自分で配合した土を使う場合は、赤玉土(小粒)7:腐葉土2:バーミキュライト1の割合で混ぜた土を用意しましょう。
(2)ステップ2:植え付け
・植え付け時期
10月中旬~11月上旬に行いましょう。発芽の適温は18℃前後です。種まき時期が早すぎると、冬の寒さで凍害を受けやすくなり、遅すぎると成長が遅くなるため、実がなるまでに時間がかかってしまいますので、適切な時期を見極めて植え付けを行いましょう。
・植え付け方法
種や苗を直接、畑やプランターへ行う場合の方法をご紹介します。発芽に成功しやすい種からの育て方は、後ほど詳しくご紹介しますね。
1:種から育てる場合
<地植えの場合>
50㎝間隔で植穴を開け、1穴に1粒ずつ、種を蒔きます。この時、種は種は黒い筋のある部分(おはぐろ)を斜め下にして、種が隠れるまで土に埋めるのがポイントです。その後、たっぷり水やりをしましょう。発芽するまでは土が乾燥しないように気を付けて管理します。発芽したら元気な株を残して間引きしましょう。引っこ抜くと、残す株の根を傷つける可能性があるので、根元からハサミで切り取りましょう。寒さから守るために、土の表面をビニールシートなどでマルチングしておくと安心ですよ。
<プランター・鉢植えの場合>
プランターや鉢を用意したら、底が見えなくなるぐらい鉢底石または軽石を敷きます。フチから1~2㎝程下まで用土を入れ、表面を平らにならしましょう。そこへ25㎝間隔で種を2~3粒ずつ、土に挿すようにして埋めます。この時、おはぐろを斜め下にして、頭が土から少し出る程度に埋めるのがポイントです。その後たっぷりと水やりをします。
発芽するまでは、軒下などの日当たりの弱い場所に置き、寒さから守りましょう。また、土の表面が乾かないように管理してあげましょう。乾燥予防に表土に敷藁などをするのもおススメです。発芽し、本葉が2~3枚ほどに生長したら、元気な苗を2株残して間引きしましょう。
2:苗から育てる場合
苗がよりも一回り大きな植穴を掘ります。苗をポットから取り出したら、根をほぐさずにそのまま植え付けましょう。株の間隔を15~30㎝ほど空けます。
(3)ステップ3:肥料・支柱・摘芯
・肥料
草丈が20~30㎝程に生長したころから、追肥を開始しましょう。2カ月に1回ほど、規定量の粒状肥料を初めの2回は、株の脇に、3回目以降は株から少し離れたところに施し、土寄せしましょう。さらに、週に1回、規定量の液体肥料を追肥してあげると肥料切れを防ぐことができますよ。
・支柱
株が成長してきたら、株の周りに支柱をたて紐を張り巡らせて、株を支えましょう。
・摘芯
草丈が60~70㎝なったら、枝の先端を摘み取って成長を止めましょう。
(4)ステップ4: 収穫
そら豆の収穫期は5~6月です。実が熟してくるとサヤが下向きに垂れ下がり、ツヤが出て、背筋が黒っぽくなってきたら収穫適期の目安となります。ハサミで切り取って収穫しましょう。そら豆は収穫適期が短く、時間がたちすぎると固くなってしまうので、タイミングには気を付けましょう。
5)ここが重要!効果的に栽培する7つのコツ
(1)土の種類・鉢植え
・土の種類
そら豆は、酸性土壌を嫌うので、植え付け前の苦土石灰による中和作業は必ず行いましょう。さらに、水持ち・水はけの良い土壌を好みます。そのため、砂質の土ではよく育ちませんので植え場所には注意しましょう。また、マメ科の植物は連作も嫌います。畑の場合は4~5年以上マメ科の野菜を育てていない場所を選び、鉢植えの場合は新しい土を使うようにしましょう。
・鉢植え
冷害を受けやすい関東より北の地域では、鉢植えで栽培するのがオススメです。寒さから守るために、株を移動させることができるからです。
(2)種の蒔き方
畑やプランター、鉢に直接種を蒔くと、種が腐ってしまうことが多いです。そのため、箱などに種を蒔いて発芽したものを、本葉が3枚ほどになるまではビニールポットなどに植え替えて育てる方法がオススメです。
用土を入れたビニールポットに、おはぐろを下にして土に挿しこみ、頭が見えるくらいの深さに植えつけます。9㎝ポットなら種は2粒の植え付けが目安です。発芽して双葉が開いたら元気な株を残して間引きします。葉が2~3枚ほどになり、底穴から根が覗けるほどに根鉢が回ったら、お好みの場所へ植え替えましょう。植え付けの方法は苗から育てる場合の植え付け方法と同じです。
(3)剪定・日常の手入れ
・剪定
本葉が5~7枚になったら、主枝を摘み取りましょう。そうすることで側枝が伸ばします。放っておくと1株から20~30本も枝が伸びるので、草丈が40~50㎝になったら、側枝を6~8本残して他の側枝を付け根から切り取りましょう。草丈が70~80㎝ほどに生長し、花が7~10個ほどついたら、側枝の先端を摘芯し、それ以上伸びないようにしましょう。そうすることで実に栄養がいくようになります。
・日常の手入れ
発芽する頃に鳥による被害を受けやすいので注意が必要です。また、アブラムシが付いていないか、こまめに見てあげましょう。
(4)肥料・水やり
・肥料
そら豆をたくさん収穫するには、しっかりと草丈を伸ばし、たくさんの葉を付けさせ、実をたくさん付ける必要があります。その為には肥料が必要不可欠です。4回以上追肥を行うようにしましょう。
・水やり
発芽後はほとんど水やりの必要はありません。乾燥が激しい場合のみ、たっぷりと水やりをしましょう。
(5)季節ごとの手入れ
・春
花を咲かせると、実が膨らんで重たくなるので株が倒れやすくなります。株元に土を足し、しっかりと固定しましょう。それでも倒れそうなときには、伸びすぎた茎の上を切り戻します。
・冬
乾燥しやすいので、株元に敷藁を行いましょう。水が逃げにくくなるほか、霜などから守ることもできます。また、株の北側か西側に笹竹を立てると防寒対策になります。2月頃からつるが伸び始めるので、支柱を立てて株を支えましょう。
(6)日当たり・置き場所
日当たりが良い場所で育てましょう。そら豆は日光に十分に当てることで花や実の付きが良くなります。
(7)虫対策・健康的に育てるコツ
・害虫
アブラムシが新芽や茎に発生しやすいです。殺虫剤で駆除することができますが、食用に栽培している場合は、人体に影響がないかどうか、よく確認する必要があります。人体に影響のない木酢液をかけるとアブラムシが逃げていくのでオススメです。
・病気
モザイク病やさび病などが発病しやすいです。モザイク病は葉に黄色や緑色のモザイク症状が現れます。アブラムシがもつウイルスが原因で感染するので、予防するにはアブラムシの防除を徹底しましょう。さび病は、葉や茎にサビのような黄褐色の粉が現れます。カビの一種です。感染した部分は切り落として除去しましょう。拡散してしまうと、防除が難しくなりますので、薬剤を使用して予防することが大切です。
6)そら豆の収穫後の効果的な用途とは
(1)そら豆の実を使う
・塩茹でする
簡単なのに、おつまみやおやつとしてそのまま食べても美味です!
・サラダにする
そら豆をサラダにしても美味しいですよ。
・スープにする
食感を楽しみたいなら、そのまま具材としても美味しいですし、ミキサーにかければ簡単なポタージュが作れちゃいます。
・天ぷらにする
そら豆は揚げても美味しいです。エビとの相性がいいので、かき揚げにするのもオススメです。
(2)そら豆の煮汁を使う
・飲む
そら豆の煮汁を数回に分けて飲むと、むくみ解消や効果促進などの効果が得られます。
・染色剤にする
煮汁は時間が経つと紫色になります。煮汁で染色してオリジナルの手ぬぐいを作るのも良いですね。
7)注意!保存する場合の3つのポイント
(1)常温保存はしない
収穫した当日に食べられないという場合、絶対に常温保存は避けましょう。
(2)冷蔵保存はサヤから出さない
冷蔵保存する場合は、サヤのまま袋に入れて保存しましょう。サヤから出してしまうと乾燥して固くなってしまいます。また、風味や栄養も落ちてしまうのでもったいないです。冷凍保存の場合でも3日以内には使い切りましょう。
(3)やっぱり冷凍保存が1番
冷凍保存なら、1~2ヶ月は保存が可能です。冷凍保存をする時は、まずサヤから豆を取り出します。その後、必ず沸騰したお湯で2分ほど加熱処理を行いましょう。加熱処理をすることで、風味や栄養が落ちるのを防ぐことができます。加熱処理が済んだら、すぐに氷水につけて温度を下げましょう。これで変色を防ぎ、鮮やかな緑色のまま保存することができます。その後、保存袋(ジップロックなど)に入れて冷凍庫で凍らせましょう。
8)ここがオススメ!そら豆を栽培する魅力とは
(1)育てやすい
水やりや肥料に気を付けて管理すれば育てやすいです。
(2)豊作
1度にたくさんの実をつけるので、たくさん収穫できます。
(3)新鮮なそら豆を楽しめる
そら豆は「美味しいのは3日だけ」と言われるほど鮮度が落ちるのが非常に早い野菜です。フレッシュなそら豆を食べられるのは家庭菜園ならでの特権ですね。
今回のまとめ
1)そら豆の紹介
2)種類はあるの?そら豆の2つの種類と特徴
3)グッズを整えよう!栽培するのに必要な9つのグッズ
4)正しいな栽培方法を!そら豆の4つの栽培ステップ
5)ここが重要!効果的に栽培する7つのコツ
6)そら豆の収穫後の効果的な用途とは
7)注意!保存する場合の3つのポイント
8)ここがオススメ!そら豆を栽培する魅力とは