昔から「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花」と言われるように、女性の美しさの例えになるほど、魅力的な芍薬の花。
漢方としても有効なこの花を、家でも育ててみたい!と思う方も多いですよね。今回は、その芍薬の育て方・コツについてご紹介します。
芍薬の育て方解説!8つの栽培のコツと注意点とは
1)芍薬の紹介
(1) 芍薬(シャクヤク)とは
芍薬はボタン科の多年草で、初夏の頃に大きな虹色や、白色のボタンに似た花を咲かせます。別名を「顔佳草(かおよぐさ)」「夷草(えびすぐさ)」ともいいます。
(2) 科目・原産地
科目:ユキノシタ目ボタン科ボタン属
原産地:中国東北部~シベリア(ユーラシア大陸の東北部)にかけて
(3) 草丈・開花期
草丈:60~120cm
開花期:5月~6月
(4) 名前の由来
芍薬は中国では漢方として利用されており、それが日本に渡ってきた際に、「芍薬」の漢字をそのまま音読みしたとする由来があります。また、別の説では姿がしなやかで、優しい様を意味する「綽約(しゃくやく)」の言葉に由来するともいわれています。
(5) 期待できる効果・効能
鎮痛・鎮痙(ちんけい)・収斂(しゅうれん)・緩和作用など
(6) 栽培の難易度・耐寒性 など
難易度:ふつう
耐寒性:強い
2)芍薬の7つの種類と特徴
(1)一重咲き
花弁が8枚程度を一重咲きといいます。
(2)金しべ咲き
一重咲きですが、雄しべが太く金色に盛り上がってみえるものをいいます。
(3)翁咲き
一重咲きで、雄しべが花弁化して、花の中心に集まっているものをいいます。
(4)冠咲き
内弁の花弁化がさらに進んで、幅が広くなっているものをいいます。外側の雄しべは、花弁化せずに残っています。
(5)手まり咲き
雄しべが完全に花弁化し、外側の花弁と同じようになっているものをいいます。
(6)半八重咲き
中心部に雄しべはありますが、外側は花弁化しているものをいいます。
(7)バラ咲き
雄しべが完全に花弁化して、バラのようになっているものをいいます。
3)芍薬を育てるのに用意する8つのグッズ
(1)グッズの種類
芍薬の苗、鉢植え(鉢植えで育てる場合)、用土、ジョウロ、シャベル、肥料、殺菌剤、支柱立てなど
(2)グッズを選ぶ基準
鉢植えで育てる場合は、8~10号程度の、なるべく大きくて、深さのある鉢を選びましょう。また、用土は水はけの良いものを選びます。
(3)初期費用
2,000円前後
※個人差があります
(4)入手方法
園芸店や専門店、インターネットなどで入手できます。
4)芍薬の4つの栽培ステップ
(1)ステップ1: 苗植えの時期
苗植えの適期は、9月~10月です。苗に新芽が何個かついているものを選ぶようにしましょう。
(2)ステップ2: 肥料
リン酸を多く含んだ肥料を用いると、花が大きく育ちます。そのため、植え付けの時にリン酸が多めに入った緩効性化成肥料を、1㎡あたりコップ1~1.5杯分程度混ぜ込んでおきましょう。
(3)ステップ3: 増やし方
芍薬は、9月~10月が株分けの適期です。しっかりと育った株を土から丁寧に掘り起こしたら、根の周りの土を根を傷つけないように払い落します。その後2つ以上の芽をつけて、株をハサミで切り分けたら、切り口が腐らないように殺菌剤や微生物資材、草木灰につけて消毒します。その後苗植えと同様に株を植えつけて完了です。
(4)ステップ4:植え替え
芍薬は根が繊細で、根付くまでに時間がかかるため、植え替えを嫌います。ただし、鉢植えで育てる場合には、根が良く張るために土の質が低下しやすく、3年~5年ごとに植え替えの必要があります。9月~11月が植え替えの適期です。これまでよりも一回り大きな鉢を用意したら、株を取り出して、根についた古い土を優しく払い落します。以降のやり方は、苗植えと同じように行います。
5)芍薬を効果的に育てる8つのコツ
(1)土の種類
鉢植えで育てる場合には、土は赤玉土(中粒)4:鹿沼土4:腐葉土1~2:もみ殻燻炭1の割合で混ぜたものがお勧めです。また、地植えの場合には、完熟堆肥や腐葉土を、1/3程度混ぜ込み、1~2週間ほど寝かせておくようにしましょう。
(2)苗の植え方
鉢植えで育てる場合には、病虫害を防ぐためにも根の用土はすべて取り除いて、鉢底にゴロ土を敷くと良いでしょう。また、地植えの場合には、植え穴は50cm程度の深さにします。
(3)剪定・日常の手入れ
・芽かき
余分な茎を取り除くことで、太い茎に栄養が集中するため、花つきが良くなります。また、芽かきを行うことで株の風通しが良くなって、病害虫の予防にもなります。
・摘蕾
増えてきた芽をすべて育ててしまうと、株全体に栄養が行き渡らなくなってしまうため、摘蕾を行いましょう。目安としては、1本の茎に1つのつぼみです。脇から出ているつぼみを、根元から切り取りましょう。
・花がら摘み
芍薬は放っておくと、花が咲き終わった後で実がつきます。その実が栄養を吸収してしまうので、花が咲き終わったら首元から切り取ります。ただし、種を取りたい場合にはそのまま残しておきましょう。
(4)肥料・水やり
最初の肥料をやった後は、3月、5月、9月、10月と年4回程度追加で肥料を与えます。水やりは、土の表面が乾いたらたっぷりと与え、水切れがないよう注意します。
(5)季節ごとの手入れ
特別な手入れは必要ありませんが、年に4回の追肥と、剪定を都度行います。
(6)日当たり・置き場所
日当たりを好みますが、反面、日が当たり過ぎて乾燥しないよう注意します。午後は日陰になるような場所や、半日陰でも育てることは可能です。
(7)増やし方
株を分けるときは3~5芽程度で、根を切らないように注意します。
(8)虫対策・健康的に育てるコツ
芍薬がかかる病気として、炭そ病・灰色かび病・褐斑病・立ち枯れ病・うどんこ病・モンパ病などがあります。主に土の状態や栽培環境によって起こりますので、水はけのよい土と、風通しの良い場所で育てましょう。また、高温多湿の状態だと、アブラムシやヨトウムシ、ネコブセンチュウなどの害虫が寄ってきますので、定期的に殺虫剤を散布しましょう。
6)芍薬を育てる時に特に注意すべきこと
(1)日常管理をきちんと行うこと
芍薬は宿根草のため、きちんと管理をすれば何年もの間花を咲かせてくれます。毎年美しい花を咲かせるためにも、用土や生育環境をまめにチェックして、手入れを行うようにしましょう。
(2)大輪品種には支柱立てをする
芍薬の中でも、大輪品種は草丈が長くなりますので、支柱立てをきちんと取り付けましょう。支柱立てがなければ、雨風で倒れてしまいます。支柱立てを取り付ける際には、茎を支柱に二か所以上固定しましょう。
7)芍薬の成長後の効果的な3つの用途とは
(1)漢方
芍薬は根の部分を用いれば、漢方として活用出来ます。主に「婦人病」に良いとされますが、個人で漢方として用いる場合には、専門家にやり方を聞いてから行うようにしましょう。
(2)ハーブ
勺の花弁はハーブとして活用出来ます。
(3)香水・フレグランス
芍薬の優雅な香りは、香水やフレグランスなどで活用されます。
8)芍薬を育てる魅力とは
(1)数年にわたって観賞を楽しめる
芍薬は、きちんと育てれば毎年のように美しい花を咲かせてくれます。自分の家で、美しく気品漂う芍薬の花の観賞を楽しむことで、日々の暮らしの中に心の潤いを与えてくれます。
(2)贈り物としても人気の花
芍薬は特に5月の季節には、贈り物としてはピッタリの花です。美しく咲き誇る大輪の花は、贈り物やお祝い事にも大変喜ばれ、お勧めです。
今回のまとめ
1)芍薬の紹介
2)芍薬の7つの種類と特徴
3)芍薬を育てるのに用意する8つのグッズ
4)芍薬の4つの栽培ステップ
5)芍薬を効果的に育てる8つのコツ
6)芍薬を育てる時に特に注意すべき2つのこと
7)芍薬の成長後の効果的な3つの用途とは
8)芍薬を育てる魅力とは